東京国立博物館・表慶館

さて、京都のインクラインについて取り上げた前回、ある建物が出てきましたよね。

そう、コレ。今日はこの建築の設計者・片山東熊(かたやまとうくま)について取り上げます。
山東熊(1854-1917)は明治期の建築家で長州出身です。長州出身ということもあり、奇兵隊にも参加していました。維新後、彼は工部大学校に進み、建築科第一期生として卒業しました。工部大学校建築科の同期には東京駅を設計した辰野金吾(たつのきんご)や、三菱オフィス街を設計した曽禰達蔵(そねたつぞう)がいます。この三人の卒業生が日本の近代建築を支えていくことになるのです。
三人の中でも片山東熊は赤坂離宮など、宮廷建築に多く関わりました。それもそのはず、1889年から彼は宮内省内匠寮に所属し、現存する建築の多くはそれ以後に設計されたものが中心となっているからです。
また皇室関係と言うこともあり、博物館建築も多数取り扱っています。各国立博物館の建築のうち、東京の表慶館、京都、奈良の本館は片山東熊の手によるものです。
では、そのうちの表慶館について見てみましょう。

表慶館(ひょうけいかん)は東京国立博物館内の施設で、本館の向かって左手に位置しております。
これは明治33年(1900年)の皇太子(大正天皇)のご成婚を祝って、全国の有志が組織した東宮慶事奉祝会によって計画されたものです。計画の翌年に起工され、7年後の明治41年(1908)に完成、皇室に献じられ東京国立博物館(当時は東京帝室博物館)の管理となりました。

ファザード(正面)部分です。この建物、表面が花崗岩で白く覆われているため、石積みかなぁ?と思いきやレンガ積みなのです。建物の美観をよくするために、こういった細工が施されるのですね。ちなみにこの建物に使われたレンガには「上敷免製」という刻印があります。近代のレンガ建築は製造元の刻印がされるため、製造元を容易に見分けることが出来るという特徴があります。このレンガが焼かれたのは、埼玉県深谷市上敷免にある日本煉瓦株式会社ですね。

壁面の装飾も凝ったつくりをしております。一階部分の窓の表現なんかは、放射状に広がる幾何学的な方形をあしらっており、建築の重厚さに比してモダンな感覚を受けます。

玄関内側にもリースや松明、および幾何学模様(卍くずし風だが、名前が分からない)を配置したつくりとなっております。日本の建築でやったら原色ゴテゴテの彩色をするのでしょうが、花崗岩の白のトーンで統一されると上品さがあります。



列柱(れっちゅう)の表現も個性豊かで面白いです。二階のファザードや張り出し部分には派手なイオニア式の列柱。それ以外の柱にはドーリス式の列柱と、用途による使い分けがされていますね。

そして注目していただきたいのが頭頂部のドーム。

現在の色は緑青の塗装したものです。これは平成17、8年に行われた修理の際、以前の色に似せて塗装されたました。この青が時間を経るにつれ、えもいわれぬ深緑色へと、変色していくことになります。
そう、建築とケミストリーの関係。次回のテーマは「緑青」(りょくしょう)です。

<アクセス>

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東京メトロ京成電鉄上野駅から徒歩15分。