エレクトロン貨

またマンガの話の続きです。
リュディアという国はメソポタミアの四王国(リュディア、メディア、新バビロニア、エジプト)の一つであると同時に、世界最古の鋳造貨幣を作った国家であります。
この国の貨幣鋳造技術はヨーロッパや、アジアに伝わり、アケメネス朝ペルシアによる初の国際通貨の誕生を見ることになります。リュディアは領内にあるパクトロス川より掘り出される砂金によって、豊富な金を有していました。アケメネス朝ペルシアの首都・ペルセポリスにあるアパダーナ(謁見の間)に刻まれた朝貢図の中にはリュディア人とその朝貢品が描かれており、その品の一つに金製品の腕輪があることや、近隣のフリュギア王ミダスは黄金を生み出す腕を手に入れた(マイダスハンド)という説話があるなどから、アナトリア半島西部における古代の産金の豊かさが伺えます。
ということで、今回はリュディア王クロイソス在位中に使用されていた貨幣を描きました。

この時代の貨幣は片面のみです。また、文字も記されておりません。図像は獅子が雄牛を襲っている図です。雄牛と獅子のモチーフはメソポタミアの工芸や美術品に広く見られるモチーフとなっています。
ちなみにエレクトロン貨というのは後代の名称です。エレクトロンとは琥珀(こはく)のことで、リュディアの貨幣は金と銀の合金(エレクトロン)で出来ており、その輝きが琥珀の色に類似することからこの名称が付きました。
ちなみにエレクトロンは電気(エレクトリック)の語源でもあります。こちらはイギリスの物理学者であるウィリアム・ギルバートが、琥珀を使って静電気の実験を行ったことから語源となりました。
いやあ、偉大也、琥珀