邦画の萌芽を奉賀して、一票奉加

と、いうことでこの企画に参加しました。
2008-11-13
所感を十位から順に述べていきたいと思います。
十位 ルパン三世 ルパンvs複製人間 (1978)
この作品のルパンこそが、私のルパン。
娯楽メインの作品でありながら、ルパンという男の「性質」(タチ)について最も深いところまで抉り出している。五右衛門でも次元でもなく、実はルパンに最後までついていく人間は銭形と不二子なんじゃないのかなぁ、と、考えてしまう。
九位 魔界転生 (1981)
サニー*1の無刀取り、炎のトミー*2無双、レーザーウィップを振り回すジュリー(後にこの技術はシャイダーに運用)に尽きます。
この作品でジュリーから熱いベーゼを受けた真田広之は、その魔界の力の影響か、仕事人と戦うオカマ*3になったり、志穂美悦子に変身する*4などの、「女体化能力」を手に入れるようになります。

八位 野獣死すべし (1980)
茫洋と蜃気楼のように佇む、松田勇作が夢と狂気の「狩りの世界」へ連れていってくれます。トンネルを抜けても、そこは雪国ではなく、煉獄。『魔界転生』にも出演した、ミスタードルゲ*5こと室田日出男の演技が冴えます。
「X、Y、Z…これで終わりって、酒だ」
七位 飢餓海峡 (1965)
スーさんやって丸くなる前のドス黒三國連太郎を堪能するなら、この作品か『切腹』。モンスター教授こと安藤三男*6を撲殺するその非道さ、恐山でイタコに怯え、逃げ回る様など、もう、堪りません。
でも、ヒロインは刑事役の伴淳が言うほどに「健気」な女性だったのか?そこらへん考えると、監督の内田吐夢は女性への幻想があまリない人なのかなぁ。
六位 悪魔の手毬唄 (1977)
犬神家より、こっち。
快活な母・岸恵子が歪んで崩れていく。その悲哀と、挿入されるマレーネ・ディートリッヒ主演の『モロッコ』のラスト、ヒロインが裸足で砂漠をひた歩く、がオーバーラップして悲しく、ただ悲しく。
トミーが総社駅に佇むラストも、金田一の無粋さと合わせてなんともいえない気分にさせます。まぁ、ぶっちゃけ加藤武が「ヨーシ、分かった」してくれれば、何でもいいんですが…。
五位 イデオン 発動編 (1982)
こうして見ていくと、どの作品も女性が惨憺たる目に遭う作品ばかりで、自分の品性を疑ってしまいます。
宇宙空間に正座しているカーシャの美しさには、言葉もありません。また、トミノの井上遥の扱いかた(ガンダムではヒロイン、イデオンでは汚れ役)は、実相寺昭雄桜井浩子に対する扱い(ウルトラマンではヒロイン、曼荼羅では汚れ役)と類似していて面白いです。
四位 生きる (1952)
いのちみじかし、こいせよおとめ。
ここからほぼずっと志村喬のターン。不幸なのは雪の中で死んだ志村喬ではなく、何も為すことなく死んでいく「自分たち」なんだということ。私の中での日本版ファウスト志村喬(ファウスト)の陰鬱さとうってかわって、メフィストフェレス的ロールの伊藤雄之介やグレートヒェン(?)的ロールの小田切みきの快活さが善いですね。
三位 ゴジラ (1954)
映像で「神」を感じた唯一の作品。ゴッドやアラーではなく、「カミ」。人間や機械や動物には殺されたくないが、ゴジラにだったら、殺されても、踏み潰されてもいいな。そんな『ゴジラキングギドラ』の土屋嘉男のような気分になってしまう。
ただし「ゴジラジャガーでプァンチ、プァンチ、プァ〜ンチ♪」や「ゾーン、ゾーンぼっくらのなーかーまー♪」*7の頃のゴジラには、踏み潰されたくない。この作品のゴジラ、だけ。
二位 ガス人間第一号 (1960)
私の大好きな土屋嘉男の主演作(どう見ても主演クレジットの三橋達也狂言回しでしょう)。私の中の特撮最高峰。
「僕たち、負けるもんかっ」の台詞で笑ってしまう人とは友達になれそうにありません。土屋嘉男には土屋嘉男のかなしみが、八千草薫には八千草薫の悲しみがある。二人の「想い」はきっと食い違っています。土屋嘉男だけがそのことを分かっていないし、だからあの台詞なんだけども…、それゆえにあれは「愛」であったと、
八千草薫は同情や、恩義なんかで一緒に死んだのではない」と、私は思うのです。
そういえば音楽の宮内国郎も、博士役の村上冬樹も、ついこのあいだ鬼籍に入ったんだなぁ…。土屋嘉男には長生きしてもらいたい、切に。
一位 天国と地獄 (1963)
これしかない。
佐藤勝の暗鬱なテーマで始まるこれしかない。
仲代達矢の白目がギョロギョロ光るこれしかない。
山崎努黒澤明のサングラスがギラギラ光るこれしかない。
志村喬と土屋嘉男と加藤武がポリスメンなこれしかない。
田豊が現実でも映画でも泣きそうな声で「シンイチィ〜」と叫ぶこれしかない。
酒匂川を東海道本線が、湘南を江ノ電が疾走するこれしかない。
蒸し暑い夏の湘南、小屋で腐っていく男女の死体はこれしかない。
紅い煙が立ち上る、モノクロの現実の中の超現実はこれしかない。
そして「クソォっ、チクショォオオオっ!!」
これしかないんです。

*1:千葉真一。千葉治郎の兄貴

*2:若山富三郎

*3:必殺4 恨みはらします

*4:コータローまかりとおる

*5:バロムワンの敵。ドルゲちゃん事件で降板

*6:ミスター悪の首領の座を飯塚昭三と争い続ける。七色仮面ジャイアントロボ人造人間キカイダーイナズマンF、秘密戦隊ゴレンジャー東映スパイダーマン宇宙刑事シャリバンなど、演じた悪の数は数え切れない。なのに三國連太郎如きに海に沈められるなんて、くやしいっ

*7:ゴジラ対メガロ』『流星人間ゾーン』における子門正人の唄。どちらも極めてフレンドリーなゴジラ