いっちゃんながい日

日本のいちばん長い日 [DVD]

日本のいちばん長い日 [DVD]

東宝の映画を見る際、私は大まかに二種類の「見方」で捉えます。
ひとつは役者が演じる役に感情移入するやり方。
もうひとつは、役者自身に感情移入し、その文脈で役を見るやり方です。
この映画、『日本のいちばん長い日』に対する私のやり方は、間違いなく、後者。

なぜ、東宝映画においてこの二種類の見方を駆使するかといえば、東宝はわれらが黒澤明本多猪四郎のホームグラウンドだからです。
彼らは山本嘉次郎門下であると同時に、生涯にわたる友情を貫いた二人でもあります。そんな二人が東宝で1954〜64年の十年にかけて打ち出した、作品群。
七人の侍』、『ゴジラ』、『生きものの記録』、『空の大怪獣ラドン』、『どん底』、『地球防衛軍』、『蜘蛛巣城』、『美女と液体人間』、『隠し砦の三悪人』、『宇宙大戦争』、『悪い奴ほどよく眠る』、『ガス人間第一号』、『用心棒』、『モスラ』、『椿三十郎』、『妖星ゴラス』、『キングコング対ゴジラ』、『天国と地獄』、『マタンゴ』、『海底軍艦』、『モスラ対ゴジラ』、『三大怪獣 地球最大の決戦』、『赤ひげ』…。
そして、これら作品群を彩る俳優たち。
三船敏郎志村喬、藤田進、宮口精二平田昭彦田崎潤加藤大介、加藤武、土屋嘉男、伊藤雄之助久保明村上冬樹天本英世加山雄三、三井弘次、石山健二郎、田島義文、
この綺羅星のごとき俳優たちが、みんな揃う。『日本のいちばん長い日』では一同に会し、宮城の奥深くで暗闘を繰り広げるんですよ!興奮しないほうが、嘘ですよ!
三船が介錯なしで割腹するんですよ!志村喬玉音放送の前振りをするんですよ!藤田進が青年将校に脅迫されるんですよ!宮口が冷や汗をたらたら流し続けるんですよ!平田昭彦が松代ではなくて厚木にいるんですよ!田崎がマラリヤで苦しんでるんですよ!このころの加藤武毛沢東そっくりだなあ!加藤大介がNHKですよ!土屋嘉男の東部軍参謀がかっこいいんですよ!伊藤が特攻を送り出すんですよ!久保は反乱軍です!村上冬樹は幕僚です!天本英世はラリッってます!加山雄三は銃を脳天に突きつけられます!エトセトラエトセトラ。
そしてとどめにナレーター:仲代達矢
50〜60年代の東宝の役者愛を抱く人々には、たまらん一作!!