シャーリーの前世はテンプルに

アパートの鍵貸します [DVD]

アパートの鍵貸します [DVD]

さすがはビリー・ワイルダー
最初から最後までハラハラさせられどおしでしたよ。一級のサスペンスです。
いや、実はラブコメなんですが、ある一点において非常にサスペンスなんですよ、この作品は。
曰く
「フラン・キューブリックと主人公のフラグが成立するか、否か?」
フラン・キューブリックは本作品のヒロインです。演ずるはシャーリー・マクレーン。フランは主人公の会社のエレベーターガールにして、上司の愛人です。主人公は自分のアパートの鍵を上司の愛人との密会用に提供し、それを糸口に出世をもくろんでいるのです。しかし、彼はフランに恋をしてしまった。出世と恋の板ばさみになる、ビリー・ワイルダーおなじみの構図です。
ビリー・ワイルダーの作品において特徴的なのは、あらゆるシチュエーションでの三角関係です。
サンセット大通り』では、金持ちのハリウッド熟女と、脚本部の若い女性との間で揺れ動く三角関係。
お熱いのがお好き』では、女装と男性の間を揺れ動く、自身のセクシャリティにおける三角関係。
そして『アパートの鍵貸します』では、出世と恋の三角関係です。
しかもこの三角関係は、主人公や視聴者以外には俯瞰できず、主人公は一人その清算に苦しみ、読者も彼に寄り添いながらやきもきします。誤解しあう人間関係を喜劇的に、そしてちょっぴり悲劇的に描き出すのがビリー・ワイルダー節というやつでしょうか、ね。
ででで、話をヒロインのフラン・キューブリックに戻しますよ。彼女がこれほど魅力的なキャラクターでなかったら、シャーリー・マクレーンが演じていなかったら、本作品はアカデミー賞を取れなかったといっても過言ではありますまいて。


もう、なんといっていいか、すごいコケティッシュ。私はこの作品でシャーリー・マクレーンに一目ぼれしてしまいましたよ。同時に自分がショートカット属性だということを認識しました。
さて。、閑話休題シャーリー・マクレーンは近年では『ココ・シャネル』でシャネル本人を演じたりといまだ現役で活躍を続けております。彼女、アメリカ本国ではスピリチュアルな方面でも名前が知られております。また、大の親日家らしく、「前世は一休宗純の愛人だった」とのたもうているそうです。
すわっ!?シャーリー・マクレーンの前世は「さよちゃん」かっ!?
と、思いきや、さよちゃんは『一休さん』オリジナルのキャラクターでして、森女(しんじょ)とう盲目の女性が一休の愛人に当たります。
…盲目のシャーリー・マクレーンと二人暮らし。…。
今日ほど、一休に嫉妬した日は…、なかったよ。
ととと、個人の怨恨は忘れて最後に。
本作品は主人公のアパートを中心に話が展開していきます。心ならずも生じてしまう複数の「同居人」と主人公のドタバタを描くお話なのです。ビリー・ワイルダーユダヤ人であります。彼はドイツからの亡命者でありまして、彼はナチによる国会議事堂放火の日以来、フランス、アメリカと亡命生活を続けていたわけです、各地でアパート暮らしをしながら。
その間ずっと同居していたのは、これまたユダヤ人のピーター・ローレ
つまり、ワイルダーのアパートは『暗殺者の家』だった、と。
暗殺者の家 [DVD]

暗殺者の家 [DVD]

おそまつさまでした。