フレンチパンパン

ちゅーことで、シャーリー・マクレーン映画の紹介です。
アパートの鍵貸します』に続く、ビリー・ワイルダー作品。主演は前作と同じシャーリー・マクレーンジャック・レモンのコンビです。
舞台はパリの朝市。ここは売春婦の巣窟でもありました。タチの悪いヒモによって毎日泣いている売春婦役のシャーリー・マクレーンジャック・レモンは警察官だったのですが、彼女と恋に落ち、ついでに自身もいつの間にか彼女のヒモへと堕ちてしまいました。シャーリーが貢いでくれる何不自由ない生活。ですが、毎晩毎晩見知らぬ男に彼女が寝取られるという、シチュエーションに耐え切れなくなるレモン。バーのマスターと結託して彼がたくらんだ、恐るべき秘策とは…。
ってなカンジのお話です。レモンは前回、「アパートの鍵を貸す」側だったのですが、今回は「女を貸す」側に回ってしまいます。どっちにしても因業というか、悲惨というか。で、本作のシャーリーは絶えず肌を露出しています。まぁ、売春婦なんで当たり前なのですが、サービスカットが多いです。お得意の身体能力のキレも冴え渡り、ビリヤード台の上のダンスなど、見所たくさんです。また、インポテンツの老紳士に心理療法を施すシーンは、後にシャーリー・マクレーンがスピリチュアルな世界に傾倒していくことを考えると、暗示的で面白い。
本作でもビリー・ワイルダー節は冴え渡ります。主人公が二つの境遇に引き回されるのは今回も同じ。彼女との暮らしと、彼女が独占されることの苦しみという二項対立と同時に、後半では『お熱いのがお好き』でもおなじみの、本当の自分と変装した自分の二項対立までありといった、対立の豪華版。コメディもここまで美しくキメることができれば、芸術ですね。ホロリとさせ、必ずハッピーエンドを迎えるので、ご家族みんなで楽しめます。ただ、売春婦とヒモの話なので、お子様に「あのひとたちなにやってるのー」と聞かれることは、間違いないのですが…。
さて、本作の撮影中、ビリー・ワイルダー監督は現場を和ませるために珍妙な歌を歌ったそうです。「私はJew(ユダヤ人)。Jewは柔道のJew♪」という歌だそうです。ビリー・ワイルダーが柔道を知っていたのは驚きでしたが、おそらく、パリやアメリカでワイルダーと同居していたある男が、モト・ケンタローという、日本人スパイで柔道の名人の役を演じていたので、彼から手ほどきを受けたのでしょう。
まあ、賢明な読者の皆さんはご存知でしょう。この男がピーター・ローレ*1だということ、は。
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*1:ビリー・ワイルダーいわくキャンベルスープ仲間。アメリカに移住したばかりで仕事がないとき、二人でひとつのキャンベルスープ缶をすすりあった。