遺作

先週土曜日に新文芸座での『江戸川乱歩全集　恐怖奇形人間』の上映に行けなかったことが悔しいmantrapriですこんにちは。
江戸川乱歩つながりでこちらを見ました。石井輝男監督の遺作です。

盲獣VS一寸法師 [DVD]

江戸川乱歩の二大怪人、一寸法師と盲獣を一本にパッケージング。これひとつで両方楽しめるという、誰も望んでいないお得感。あまつさえスタッフのみなさんがいしいてるおかんとくの偉大さに吸い寄せられ、雀の涙のようなギャラで集まったであろうことがまるわかりの、すばらしさです。
本作が役者初体験であったリリー・フランキーのほか、塚本晋也やら、手塚眞やら、熊切和嘉、園子温、中野貴雄やら、監督ばっかりのキャスト陣は、彼らの石井輝男監督へのリスペクトぶりがわかると共に、石井村長が開催する「エログロ祭り」に加わりたい村の青年団といった感じがして、とてもほほえましいです、…商業作品でなければ。
これでもかというばかりにたたきつけられるカルマとパトスは相変わらずなのですが、いかんせん予算が追いつかないためのショボイセットを、人間力によって何とか補っている状況が、わびしさと共にナンセンスさを感じさせます。エログロナンセンスの三者そろい踏みが、図らずも実現されている形です。
ああ、日本映画界がもっと石井輝男監督に予算を与えていれば、もっとグロく、もっとエグく、もっとスピーディな遺作となったかもしれないのに、ここまで追い続けた私としては少し残念です。
まぁ、本作の最後は石井作品のデウス・エクス・マキーナこと、丹波哲郎がシメてくれたので、ヨシとしましょう。石井輝男よ、エログロよ、異常性愛路線*1よ、永遠に。

…と、シメたものの、石井輝男監督は本作を撮った後も四年間存命(2005年没)し、『地獄甲子園』の脚本協力とか、グロと虐殺の後進育成に尽力しているんだがなっ！まさに外道っ！！

地獄甲子園 [DVD]

*1:石井輝男監督が撮った一連のエログロ路線を含めた東映エログロシリーズの総称