テーマ一「仮面ライダー必殺技の型と変遷」

第二講 「仮面ライダー(初代)と技パターンの時期区分」


第一作目・仮面ライダーの必殺技には三つの転機がある。

  • 第一期:カオス期(一話〜十三話)
  • 第二期:キック確立期(十四話〜五十二話)
  • 第三期:バラエティー期(五十三話〜九十八話)

これらの時期区分はそのまま第一期=旧一号、第二期=二号、第三期=新一号と主人公の交代期と同じく区分できる。この区分に沿って分析を進めていきたい。
第一期は仮面ライダーの黎明期であって、ライダーキック自体も変則的なものが多く、カタが確立されていなかった。全十三話、九(十)人の怪人中、ライダーキックで止めを刺したのは蜘蛛男、サラセニア、かまきり男、蜂女、コブラ男のみで後はライダー投げやライダー返しといった投げ技、ライダーパンチ、チョップの基本技。後のライダーヘッドクラッシャーの祖形となったライダーシザーズやサイクロンで轢く(おい、そんな名称じゃあねえぞ!)などの大技が中心となる。思ったより偏りがなく、バランスのいい技の配置となる。しかしまだ技のカタが決まっていないのでカオス期*1と呼ぶ。
第二期は二号の登場とともに、ライダーキックを視聴者に印象付けるシリーズとなった。真の意味でライダーキックが仮面ライダーの代名詞になったのも、この時期に多く使われたためだろうと考察する。特筆すべきはパンチやチョップなどの必殺技としては地味な腕技に、フライングライダーパンチといった画期的な引き立たせ方が考案された三十九話・金色狼男戦が挙げられよう。終盤での一号との共同技であるライダーダブルキックもキック確立期*2を印象付ける一品である。
第三期は一号の帰還とともにバラエティーに富んだ期間となる。メインとなる技がライダーキックに並行して、ライダーきりもみシュートやライダー反転キック(改良版のライダー稲妻キック)など数種類におよぶ。これら意図的に考えられた数種類の技が、ライダーキックを与党としながらもバランスよく配置される。後年V3やスーパー1で確立される数種類の技の競合(けして一回限りではない)の美しさがこの段階で見られる。ある意味珠玉の技配置はこの第三期にあるといっても過言ではない。*3感動したのは帰ってきた二号がエイドクガーに放ったきりもみシュートである。二号ライダーにおいても登場技数第二位の立場を保ったきりもみシュートは後のV3きりもみキックや、きりもみ反転キックの衝撃へと引き継がれることになる。そしてスタッフの愛が感じられるのは、与党を保ちつつも影が薄くなったライダーキックを地獄大使との決戦や一号単体での最後の見せ場であるサボテンバット戦で使用している点である。技を愛し、ストーリー中での配置に対する細心の注意がないと、こういった心遣いはできない。仮面ライダーから生まれた技のキャラクタライズはもはや最初にして、最高峰のものが確立されていた、といってもよい。 
以上示した三つの区分にしたがって、以後のライダーシリーズの技は展開してゆく。来週からはV3〜ストロンガーを通覧して、この3パターンの亜流とその見せ方について考えていきたい。

*1:この区分に当てはまるのはクウガ

*2:この区分に当てはまるのがX、ストロンガー前期、スカイライダー、スーパーワン、RX、

*3:この区分に当てはまるのはストロンガー後期、スカイライダー後期、スーパー1